今回、講義を行わせていただきました成安造形大学 濱中倫秀先生に、講義後の感想をインタビューさせていただきました。また、この授業のサポートとして入ってくださった、八田先生、塩山先生のご意見も交えながら、細やかなご感想をいただきました。
今回は貴重な機会をありがとうございました。
この講義を行う事となったきっかけをお聞かせください。
私(濱中先生)自身、様々なデザインフォーラムやワークショップで、議論を描いたグラフィックレコーディングの前で、みんな写真を撮ったり議論を交わしているのを見る機会が多くあり、この技術は学生に習得させたいなと思っていました。
そして、まずは私の授業のアシスタントをやっている学生に習得してもらおうと思ったのがスタートでした。
また、そのスキルを活かすことで、例えばグループディスカッションがうまく回せたり、
大勢の前で意見が言えない(発言が言えない)学生でも、自分の意見をビジュアル化して伝える技術を習得できると考えました。
そうしているうちに、本学のキャリアサポートセンターからも、就職活動の場でも「武器」になるのではという声が出て、授業に本格的に取り入れようということになりました。
例えば、グループディスカッションで、みんなの意見を小さいポストイットに書いても、「うん、それ、いい意見だけど、一生懸命書いても誰も見てくれないかも」と言う場面がありますよね。もっと話が伝わるように可視化すれば意見も伝わりやすい。
本学の学生はビジュアル化にもともと長けている子が多いので、このスキルを身に付ければ様々な場面でイノベーションを起こせるのではと思いました。
学生の皆さんの反応はいかがでしたか。
今回の授業では、絵の上手い下手ではなく、それを介してコミュニケーションができるかどうか、ということがポイントだと思います。
意見が言えなかったら終わり、などと言うゼロサムではなく、意見は必ずしも言葉として表出しなくても、可視化して伝えることができれば、それが発表あるいは発言となる。
意見を積極的に言える人が「仕事ができる人」と思われる現場がありがちですが、「描いて伝える」と言う選択肢がある、という意識を持っていることが大きな強みになると思います。
やる気のある子が多く出席する授業ではあるのですが、今回、その中でもテーマに対してそれぞれに創意工夫を積極的にしている子が多かった。
サポートしている私たちも、上手い下手の評価ではなく「わかりやすさ」と言うキーワードを伝えながら声掛けしていました。(やはり声をかけるとポジティブさが増しますね。)
客観的なフィードバックはやはり学生にとって必要なことだと思います。
講義の中での設問も答えやすい設定で題材も良かったと思います。
講義自体はスライドばかりではなくハンドアウトもあり参加者目線で構成されていて実践的な知識が学生に伝わったと思います。完成された実践で磨かれた授業だったと思います。
全体的に気が付いた事などあれば是非お願いします。
イメージの共有化に役立つ、アドバンテージになる内容だと思いました。
デザインの現場、例えばUXを考える時でも、「商品」のデザインだけにとどまらず、その商品からどんな暮らしが待っているかまで想像を喚起させて考える必要が出てきます。
普段、図解を頭の中だけでしているとなかなか共有がしにくい。「あなたの生活に何をもたらすか」など考える機会に、こうしたイメージの共有は活かせる技術だと思います。
また、方向性が決まってからの表現となれば、作ってからの結果に対する手戻りというワンクッションがなくなるのはとても大きいと思います。打ち合わせでグラフィックレコーディングができることを学生が学べば、デザインの共有化がオープンにできてきて大きなアドバンテージになると思います。
また、知らない人同士との打ち合わせ時の壁が崩され、ビジュアルで共有化できるのは大きい。
これからは、現実に使える身近なレベルでもっと可視化するスキルを活用できるといいと思います。
例えば学園祭での説明など、身近なレベルで活用できれば、もっと効果を実感できると思います。
特に講義の中にでてきた、「図」と「絵」の違いについてはよかったと思いました。
私も授業の中で、例えば誰がステークホルダーで、誰がユーザーで、というような関係性もすぐ図にできるようになど、よく授業でも言っています。
就職のために、という切り口も大切ですが、専門領域の学びとして「複雑なものも直感でわかってもらう事はインフォグラフィックスの分野にもつながってくる」と関連づけると、さらに学生が強い関心を持って取り組むと思います。
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(サポートしてくださった塩山先生のご感想)
実際参加してみて話を聞きながら書くと
僕自身、講義に関わり、最初はひたすら文字で追っていましたが、こういう変化がありました。後から見直したときに蘇り方が全然違うんですよ。学生も、描いた後それを見ながら完璧に内容を再現できていたのが驚きでした。
(写真はサポートとして授業に入ってくださった塩山先生のノート。左画像が最初の頃、右が講義後半)
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最初の頃少し苦労していた学生も、力ををつけて良い評価を受けながらどんどん
描くことが楽しくなっていっていたようです。
同じ領域でもこの授業受けていない子もその姿を見たら
「これはいけない」と思うのでは。
そういう他と違うスキルを持つと、学生もどんどん自信が湧いてくるのではと思いました。
議論を広げるツールとして、表現の選択が広がった事、その上で、技術に偏りすぎないことも大切と学んだ事。今度はその効果を実感できる場も作りたいと思っています。
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今回は美術系の大学の学生向けの講義という事で、特に、描く力ということだけでなく、そのスキルをどう活かすかというところにも重点を置いてお話しさせていただきました。清々しい学舎の中、教授のみなさまに助けられての貴重な機会を頂けたことに深く感謝いたします。
ありがとうございました。
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